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  • 執筆者の写真Eiji Kano

[Digital Toolbox] 道路舗装点検AI

更新日:2021年5月2日

インフラ保守デジタル化の最前線~道路舗装の点検・診断業務へのAI実装



1.概要

インフラ保守には多くの人手、熟練技術者の経験・ノウハウ、危険を伴う作業、コスト低減の要請など、デジタル技術が威力を発揮し得るあらゆる課題が存在する。これをデジタル技術を駆使して解決しようとするための実証実験や実導入が国や自治体で進められている。

その中でも、特に実用化が進展している分野が道路の舗装の点検・診断である。道路の舗装については、生活道路などであれば、一つのひびを見逃したからといって直ちに大事故につながる可能性は低い。データに基づき一定の確率で妥当な判断を導き出すデジタル技術に向いた領域と言える。

こうした課題認識を踏まえ、最近、活発に開発が進められているのが、デジタル技術を活用し、スマートフォンなどを一般車両に搭載するといった簡易な仕組みだけで、効率的に道路の舗装を点検・診断するシステムである。


2.背景・効果・課題

(1)導入の背景・問題意識

​インフラをいかに保守するかという課題は、自治体にとって年々深刻なものとなりつつある。

国土交通省はインフラ点検の強化に取り組んできたが、現状、特に市町村道では自治体の財源不足のため、8割以上の道路が、上記の「総点検」ではじめて点検を行ったきりとなっているか、そもそも一度も点検されず放置されている。道路の点検・診断は、損傷が進行する前に予防的に補修を行うことで、結果としてライフサイクルコストを低減することが真の目的である。

従来、道路の点検は点検員による徒歩又は車上からの目視による確認か、専用の路面性状測定車によって行われていた。目視による点検は、多くの時間と工数を要し、通行規制もかけなければならない。また、路面性状測定車を用いた従来型の点検は高精度で、業務も効率化されるが、高コストである。


(2)導入の効果

簡易路面点検システムでは以下のようなメリットが期待できる。

低コスト化:従来の目視点検や路面性状測定車による点検の半分以下のコストで実施できる(5~6万円/km ➡ 1~2万円/km)[注:測定できる指標の種類や診断の精度が異なるので、費用対効果は単純比較できない]。 診断の客観性の確保:点検員による判断のバラつきを抑えることができる。 専門技術の継承:道路の診断を的確に行うためには、専門知識や経験が必要となるが、自治体内の土木の専門技術者は減少傾向にあり、熟練技術者からの技能の継承も困難となっている。そうした暗黙知をAI化を通じて継承していくことが可能となる。 自動化・省力化:結果がデジタルデータとして得られるので、それを用いて従来はチョークで行っていたひび割れのマーキングを電子地図上で行ったり、道路ネットワーク全体の状態を可視化し、修繕計画に役立てたり、後工程としての記録や報告書作成の自動化・効率化なども一気通貫で行える。


(3)導入する上での課題や制約条件

簡易路面点検システムは、雨天や夜間に弱い、イレギュラーな損傷には対応できない、車両によっては一定の道幅が必要といった様々な制約がある。そもそもまだ発展途上のシステムであり、現在も技術開発が進められている段階である。現在主流となっている点検員の目視や路面性状測定車による点検がすぐになくなることはない。当面は、重要度の高い幹線路線は従来型の手法で、これまで点検が行き届いていなかった生活道路は簡易な手法で、といった棲み分けが行われることになるだろう。


3.導入事例

自治体での最近の導入事例のリンクとそこから抽出した概要情報を紹介します。

  • 千葉市 道路の損傷、AIで自動検知 9月から公用車にスマホカメラ 道路管理業務への本格導入検討(2019/8/26)

  • 岡山県赤磐市、道路の維持管理にコネクテッドカーのデータを使う実証実験、トヨタ・モビリティ基金らと(2019/8/14)

  • 静岡県焼津市へのAIを活用した道路路面状態の診断実証実験の開始について(2019/7/16)

  • つくば市:先端技術で市内道路の破損を検出、AIを活用した道路路面診断システムの実証実験を開始(2019/2/12)


4.具体的に導入を検討したい方へ

自治体が実際にサービス導入を検討する際に必要となる事業者サービスの比較情報や、他の技術と連携を図りシナジー効果を出すために検討すべき事項、今後の技術発展の見通しなどの情報を管理人のnoteで提供しています。

事業者サービスの比較情報については、実際に事業者に照会をかけて事実関係を確認しています。

<関連リンク>

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記事: Blog2 Post
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